- 行政説明
帰国者の現状と援護施策についての説明
岡田 千鶴
(厚生労働省社会・援護局援護企画課
中国孤児等対策室係長)
- 基調講演
テーマ:中国帰国者への支援のあり方について
講師 :小林 悦夫(中国帰国者定着促進センター教務課長兼中国帰国者支援交流
センター教務顧問
(1) 中国帰国者に対する日本語学習支援の経過と現状
(ァ) 日本語学習支援の経過
@ 公的・組織的な取組が始まるまで
A 帰国者の増減と受け入れ・研修体制の整備
(ィ) 一次・二次センターを中心とする初期集中研修体制の意義
@ 修正の積み重ね A 不足、限界
(2) これからの支援の方向性
(ァ) 新たな「自立」とは・・・目標転換(「自立」概念の見直し)
@ 経済的自立への偏重を改める。
A 世代、ライフステージに応じた「自立」
(ィ) 支援体制のモデル転換
@ 中長期的支援の中核として「支援・交流センター」の開設
A 初期集中研修モデルから生涯学習支援モデルへ
(ゥ) 支援の体系化と連携
@ 支援課題と対応策の体系化 A 連携の拡大と深化
- 体験・事例発表
(1) 帰国者体験発表
@ 「一点感受」 帰国者一世 伊藤 秀子
A 「活到老、学到老、人生結束也学不了」 帰国者一世 田中 豊子
B 「困難を乗り越えて、早く日本の社会に適応する」帰国者二世 三浦 敬一
(2) 支援者事例発表
@ 「私の希望するサポートについて」 スクーリング講師 林 ゆかり
A 「『帰国者』と出会って」 スクーリング講師 阿部 友子
- 参加者意見交換
行政説明、基調講演、帰国者体験発表、支援者の事例発表を受けて、中国帰国者の支援のあり方ついて意見交換をしていただき、次のような意見等が出されました。
○ 中国帰国者の方と交流したり、地域行事に参加してもらおうとしても帰国者の方がどこに住んでいるのか把握できない。市役所に聞いても個人情報保護の立場から教えてもらえない、どう対応したらよいか。
・ 中国帰国者の方には、自立指導員が付いているので、自立指導員を通じて情報を伝えるのはどうか。
・ 帰国者の方が、集える場所、例えば高齢帰国者日本語教室のような核になる施設があれば、そこから情報を伝えることができる。
・ 信用のある団体からの依頼であれば、首都圏センターの刊行物に行事等のチラ
シ・お知らせを同封して送るような協力ができる。
○ 帰国者の方と交流する場合、バス旅行や食事会などの楽しい行事を企画し、行事の中で交流したり、励ましたりしているが、活動費が十分でないので、活動費を助成してくれる制度を検討していただきたい。
○ この地方は、災害、特に地震の可能性が言われている。日本語コミュニケーションが十分でない中国帰国者への連絡や避難などの支援対策を考えておく必要があり
行政の支援をお願いしたい。
○ 母が中国生まれということで、自分も中国帰国者の支援に関心を持っている。支援に対する考え方の初歩的な質問になるが、「言葉や生活習慣、社会制度が違い、日本語を学習するのも難しく、苦労することがわかっていて、中国の生活を止めてまでして、なぜ帰国するのか。」
・ お話したくないが、敢えてお話しする(帰国者一世)。
「中国では、先の戦争の犠牲者がいたるところにいて、親や兄弟が日本軍に殺さ
れたという人や戦争経験者も多くいる。そういう中にあって日本人だとわかっている自分たちが生活するのは辛いことが多い。また、何か政治的な動きがあると日本人だからという理由で辛い経験をすることもあった。中国では、経済的に恵まれた生活をしていたが、子供の将来において日本人であることが理由でまた不安定なことになると親としてかわいそうだと考えた。そして、何より自分が日本人だとわかった以上、祖国に帰りたい。そういう思いで帰国した。」
・ 当時の状況を考え、当時の価値観で考えてほしい。情況を理解していただくため
に例えば「大地の子」を読んだり、見ていただきたい。当時、日本人に対する厳しい感情が渦巻いていた中で日本人を育ててくれた中国の養父母に感謝しなければならない。
○ 地域の自治組織に呼びかけて、中国帰国者の方が御神輿担ぎやドンド焼きなど地域の行事に参加してもらえるようにしたい。地域の行事に出てきてもらって、顔や住まいがわかれば、必要な支援や理解が進むと思うので、そういう取組をしていきたい。ただし、仕事を求めて転入して来る二・三世の把握は、難しい面がある。
- まとめ・閉会挨拶
中国帰国者に対する日本語学習と支援の特徴が理解できました。
帰国者一世の方々の日本語学習は、生涯学習的な視点で支援していく必要があり、
また、地域の帰国者の学習と交流・情報交換の核となる高齢帰国者向けの日本語教室
のような場が求められていることから、その実現を応援していきます。
二・三世については、各自の目標実現に向かって努力することが必要であり、地域参加も求められているので、ニーズにあった日本語学習を支援していきます。
中国帰国者の支援に取り組もうとする人たちに共通する疑問について、あえて答え
ていただき、意見交換できたことは大きな成果であり、中国帰国者の方がどんな思いを抱いているのか考え直すことができました。
東海・北陸センターとしては、このボランティア研修会の成果を受け継いでこの地域に交流と支援の場ができるようお手伝いしていきたい。
東海北陸センターが初めて主催するボランティア研修会で至らぬ点も沢山ありましたが、皆様からいただいた御協力、運営のノウハウなどを今後の研修会や交流の取組に活かしていきます。
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