日本の夏にはいろいろの風物詩があります。
以下にそのいくつかを紹介します。
(1) お盆
@ 盆
お盆が仏教の盂蘭盆会(うらぼんえ)の略であると考えている方も多いのではないでしょうか。そもそも 「盆」 はお盆に迎える先祖の霊に供える器のことでした。古来、日本にはお盆に健在の親、仲人、師などを訪問し、心のこもった贈り物をする
「盆礼」 という風習がありましたが、仏教の盂蘭盆の 「盆」 と混ざり合って複雑になりました。
A
盂蘭盆会は仏教の浸透とともに民間に普及しましたが、その課程で盂蘭盆会と同様旧暦7月15日であった 「盆礼」 は 「お盆」 の中に吸収され、お盆といえば祖先霊の盂蘭盆会をさすようになりました。盆礼はお中元にその性格を残しています。現在では新暦の7月15日に行われますが、月遅れの8月15日前後に供養する地方も多いようです。
(2) 盆踊りと大文字焼き
@ 迎え火
迎え火は、先祖の霊が道に迷わないように、13日の夕方に目印として焚きます。おがら(皮をはいだ麻の茎)を墓前や玄関で素焼きの皿に入れて燃やします。13日に先祖を迎える墓参りをすると、16日に送るまで14、15日は一緒に家で過ごすといいます。
A 送り火
15日か16日、送り火を焚いて先祖の霊を見送り墓参りをします。8月16日の夜に行われる京都の大文字焼きは、お盆の精霊を送る大掛かりな送り火です。東山の如意ヶ岳の
「大」 の字のほか、金閣寺に近い大北山の 「左大文字」 、上嵯峨の 「鳥居形」、西賀茂・明見山の 「船形」、松ヶ崎・西山の 「妙法」 が五山送り火として有名です。
B 大文字焼き
大文字焼きは、如意ヶ岳の麓にあった浄土寺が火事になったとき、本尊阿弥陀如来が如意ヶ岳の頂上に飛来して光明を放ったので、その光明をかたどって日祭りを行ったのが始まりで、のちに空海(弘法大師)がその光を
「大」 の字に改めたといわれています。
C 灯篭流し
精霊を送ったら、明け方までに盆棚や供え物などを川や海に流した古いしきたりが灯篭流しです。美しく飾られた精霊舟に、精霊に供えた一切のものを乗せ、灯火をつけ、先祖の霊を海の彼方、十万億の西方浄土に送り出すのです。
D 盆踊り
各地に残る盆踊りというのは、精霊を迎え、送るための演芸会のようなものでした。老いも若きも日頃の憂さを忘れみんなで一つの歌、一つの輪に溶け込んでいく・・・。それが娯楽やコミュニケーションの場となって、地方それぞれの特色を伝えて今に至っています。四国の阿波おどりはスケールの大きい踊りです。
(3) 土用とウナギのかば焼き
@ 土用
もともと土用とは季節の変わり目の日のそれぞれ前18日間のことをさし、年4回あります。季節の変わり目とは、二十四節季の立春、立夏、立秋、立冬のことです。しかし、今では土用の丑の日、土用干し、土用波などのように7月20日ごろから夏の土用だけが親しまれて、夏の季語にもなっています。
A 土用のウナギ
土用の期間中、丑の日にウナギのかば焼きを食べるようになったのは江戸時代あたりからです。一説には、エレキテルなどの発明で知られる蘭学者・平賀源内が、ウナギ屋に頼まれて
「土用のウナギ」 を江戸中に広めたとかいわれています。
土用の丑の日のころは暑さが最も厳しく、体力の消耗も激しい時です。そこで夏ばて予防の食べ物として珍重されたのがウナギでした。良質のタンパク質や脂肪、ビタミンAが豊富なウナギをこの時期に食べることは理にかなっています。また、鉄分の多いシジミも
「土用シジミ」 といわれ、古くから滋養強壮の食品として知られています。
栄養豊かな食べ物が豊富な現代では、ウナギに限ることはありませんが、そうめんや冷たい飲み物だけにならないように、タンパク質や脂肪の豊富な肉・魚料理、乳製品などで夏の栄養補給を十分にしてください。先人たちの知恵にならって、特にこの時期は心掛けましょう。
(4) お中元
日本古来からの考えに、1年の始めを半期ごとに盆と正月の2回に分け、祖霊を年神とし、盆には生盆と言って生きている人(主に両親)に御礼をする習慣がありました。又、伝来した仏教の盂蘭盆会が7月15日であり、更に中国・道教の教えに、1年間の罪滅ぼし祈願のために、三官大帝の1人である地官赦罪大帝(中元二位の位)の誕生日(7月15日)を祝うことが伝わりました。それらが波及して盆と暮れに、日頃お世話になっている人に対して贈り物をするようになり、お中元・御歳暮の贈答習慣が根付きました。お中元は7月始めより15日頃までに送ります。
|