高血圧とその対処方法については、この間、当センターで発行している情報誌「天天好日」の「健康相談室」欄に連載してきました。そのタイトルは「もっとよく知ろう高血圧@〜D」ですが、紙面の関係で本年5月15日付けの第12号の「もっとよく知ろう高血圧E」で連載を終了します。
そこで、情報誌に掲載できなかった「漢方薬で高血圧を改善する」の部分について、ホームページでご紹介することとしました。
効き方はおそいが副作用は少ない
最近は、高血圧の治療に漢方薬が使われるようになり、効果が報告されています。
漢方には、もともと高血圧という概念がありません。ただ、西洋医学でいう高血圧患者によくみられる体質や、その人たちにおこりやすい症状を改善する処方は何種類かありました。それらを高血圧患者に用いると、体質や症状が改善し、血圧を測ってみると確かに下がっている例が多かったのです。
ですから、漢方薬では、高血圧ならこの処方ときまっているわけでなく、体質や症状にあわせてえらぶことになります。体質や症状にぴたっとあった処方を用いると、まず自覚症状や体調がよくなり、その後、血圧も下がってきます。漢方薬と降圧薬を併用して、降圧薬を減らすことができたという例も多々ありますし、さらには、降圧薬をやめてしまっても、血圧は安定しているという例もあります。
漢方薬はもともと、自覚症状を改善するのを主な目的にしていて、体にわるい作用の出るような薬は切り捨てられてきましたから、副作用が出ることは少ないという特徴があります。漢方薬でも副作用のでることがありますが、その多くは、その人にあっていない処方を用いた場合といわれています。
漢方薬のえらび方
漢方薬はその人に適した処方をえらぶことがたいせつです。そのためには、専門医の診察を受け、処方をしてもらうのが安全で確実です。
高血圧治療に使われる漢方処方には、つぎのようなものがあります。
@ 大柴胡湯(だいさいことう)
いわゆる仁王さん型の人、血色がよく、筋肉質でがっしりした体格の人に適します。肩や首がこりやすく、便秘がち、腹をたてると大声でどなるようなタイプの人です。
A 防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
いわゆる布袋さん型の人、色白で下腹のでた肥満タイプの人に適します。糖尿病を合併している人にはこの処方を用います。
B 三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)
赤ら顔タイプの、のぼせやすく、イライラして怒りっぽく、便秘がちの人に適します。
C 柴胡加龍骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
体力のある人ですが、ちょっとした物音にもびっくりするようなタイプで、イライラする、物ごとが気になる、寝つきが悪く、夜中によく目がさめる、などの症状がある高血圧に用います。
D 黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
三黄瀉心湯と同じく、赤ら顔でのぼせやすく、イライラする人ですが、体力は中くらいで、便秘のない場合に適します。
E 八味地黄丸(はちみぢおうがん)
老人の高血圧で、やせ型、体力が中程度かそれ以下、足腰が弱っていて、おしっこがでにくい、夜中に何度もトイレに起きる、などの症状のある人に用います。
F 半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
胃腸が弱くて体力がなく、頭痛、めまい、疲れやすいなどの症状の人に使用します。
[新国民医療シリーズ「もっとよく知ろう高血圧」((株式会社) 社会保険出版社発行)
より抜粋] |