地域生活支援推進事業

第1回支援・相談員、自立支援通訳等のための 介護通訳研修会-(報告)

ここ何年か、支援・相談員等から当センターに介護に関する研修会の開催を求める声が寄せられていたが、昨年(H25年12月19日)、NPO法人中国語医療ネットワーク・デイサービス故郷と中国帰国者定着促進センターの協力を得て開催した。関東甲信越ブロックの支援・相談員、自立支援通訳等104名が受講した。


●介護保険の理念や制度の仕組みは母語で理解

開催するにあたり、先ず、研修対象者に事前アンケートを実施した。結果、回答者の77%が介護通訳を経験しており、都内の回答者は98%に達していた。また、関東甲信越地域の支援・相談員、自立支援通訳の多くは中国帰国者二世を中心に中国語を母語とする人たちで、「介護保険制度が複雑で全体像が掴みにくく、通訳していて戸惑いを感じることがある」「ケアマネージャーの言うとおりに通訳するが、頭の中は疑問だらけだ」等の記述もあった。

介護保険の通訳場面は、介護保険の利用を促す説明、申請手続き、認定調査、ケアプラン作り、契約等と多岐にわたり内容も複雑だ。専門用語は勿論のこと、制度の内容についても十分理解しておく必要がある。ほとんどの自治体には利用者向けの介護保険の手引きがあるが、日本語であるため詳細を学び取るには相当の時間と経験を要する。しかも、支援給付受給者に関わる情報は記載されていない。そこで、そのような情報も含め、中国語を母語とする方には中国語で制度を理解してもらおうと考え、介護保険制度の概要説明として帰国者二世で介護老人保健施設「むさしの苑」の施設長である石川宏氏に解説をお願いした。参加者から「介護保険制度の仕組みや介護基準が分かるようになった」「中国語での訳し方が分かった」等の感想があった。




●異文化、異言語の壁が認定調査の評価にも影響
基調講演では、福岡医療福祉大学准教授の名和田澄子氏が帰国者の介護保険利用が全国平均より低いことを指摘し、その要因として、介護に対する価値観や倫理観の違い、差別や排除された経験、情報入手の困難さ、そして介護保険制度が異文化、異言語にまだ対応できていないこと等が挙げられた。認定調査のときに日本語で十分な返答ができなかったことから、聴力が衰えているとか認知症であるとか誤解されるケースや中国の生活様式、振る舞いから介護に反抗的と誤解されるケース等、帰国者の介護支援に関わる人たちはもっと帰国者の事情を理解して配慮するべきだと言う。そして、支援・相談員、自立支援通訳は制度をよく理解し、帰国者個人の状況や事情を丁寧に伝えていくことが大切であると強調した。


●トラブル回避のために
プログラム最後の質疑応答では、介護サービスを拒否し続ける人、決められたプラン以上にサービスを求める人への対応等についても意見、情報交換がなされた。日本語教室で介護保険の周知に努めるとか、問題が大きくなる前に普段からケアマネージャーやヘルパーと連絡を取る等の参考となる意見が出た。中国帰国者の介護通訳は、今後も、確実に需要が伸びるだろう。当センターとしても支援の最前線にいる支援・相談員、自立支援通訳の皆さんとの連携を深めていきたい。(M)


介護保険制度の概要説明の資料は、現在、中国帰国者定着促進センターによって改良され『支援・相談員、自立支援通訳等のための介護保険制度の手引き』(日中対訳、介護関連用語付き)として、全国の自治体で活用していただけるようになっている。また、帰国者や家族に介護保険の説明をする際に使用する、中国語の絵付きパンフレットも用意されている。




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