地域生活支援推進事業

「第2回支援・相談員、自立支援通訳等のための 介護通訳研修会」-(報告)


首都圏センターが平成26年12月5日、国立オリンピック記念青少年総合センターで開催した介護通訳研修会には、関東甲信越ブロックから支援・相談員等94名が参加した。事前アンケートでは、認知症患者の問題をはじめ、介護保険利用を阻む問題、要介護認定調査時の問題、訪問サービスや施設サービス利用時の問題など、介護支援に纏わる現場からの素朴な疑問や切実な訴えが噴出し、問題の多様さと深刻さが伝わってきた。


★テーマの一つは認知症の理解

長年に亘り老年看護、高齢者ケアの研究をされている鎌田ケイ子氏(NPO全国高齢者ケア協会理事長)から、認知症という病気の本質や、患者や家族へのサポートの在り方について学んだ。認知症は、周囲の対応次第で症状が重くもなるし軽くもなる病気だという。本人が失敗したり現実を取り違えたりすることを言っても、正面から否定してはならない。正しいことを理解してもらおうとしても、効果がないばかりか、症状を悪化させる可能性もある。介護者には、本人の言い分を一旦受け止めた上で、サポートしたり解決策を見つけたりするなど、余裕のある態度が必要で、優しさが試されるという。

認知症については関連書籍が多数出回っているし、国も患者数の増加を見込んで、国民に対し基本的知識の普及に努めている。しかし、中国語で書かれた資料自体はほとんど無い。そこで、今回、介護情報提供事業を担う中国帰国者定着促進センターに、日中対訳版『認知症の基礎知識』と別冊付録の中国語版『こんなときどうする?チャートでわかる認知症介護』(著者は鎌田ケイ子氏)を提供してもらった(※)



★帰国者支援の現場から

続いて、日中両国の言葉が話せるケアマネージャー川上月氏より、帰国者の介護支援事例を伺った。中でも老老介護を続けて介護サービスを強く拒否していた家族が、見かねた近隣の人に連絡されてから介護保険を受けるまでの支援事例が印象的だった。そこでは、
@信頼関係を築くための労力を惜しまない、
A困難な問題は一人で抱え込まずに関係部署と連携して当たる(近所の人の協力も得る)、
B本人の思いを尊重する、
C相手と同じ目線に立って支援する
など、対人支援の基本的姿勢を繰り返し強調された。

休憩時間に、ケアマネージャーの資格を持つ支援・相談員がスタッフに近寄って来て「帰国者や家族に介護保険制度を理解してもらう必要を痛感する。地域で介護保険講座を開くなど、直接働きかける活動をしてほしい」との要望が出された。また、グループ討議の中では、異口同音に「帰国者を受け入れる入所施設の情報がほしい。」との声も出た。

帰国者の介護支援はまったなしの状況にある。国や地方自治体、そして帰国者支援組織が連携して、それぞれ何をどのように担っていくのかをより一層明らかにしていく必要を感じた。(M)




(※)中国帰国者定着促進センターが提供可能なその他資料 [支援・相談員等向けの資料として]

@介護保険制度と基本用語を学ぶ為の日中対訳資料、DVD A要介護認定調査の内容を知る為の日中対訳資料B帰国者家族に介護保険を分かりやすく説明するための資料(イラスト付き)

[介護事業所・施設のスタッフ向け用として]

@中国帰国者について分かりやすく書かれたチラシ、A帰国者事情や中国文化事情をまとめたパンフレット B帰国者とヘルパー等との意思疎通を補助する絵付きカードセット


問い合わせ先:
中国帰国者定着促進センター (04-2993-1660)



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